新潟県魚沼地方は昨年末から大雪の日々が続きましたが、今日(2022.01.23)は移動性高気圧に覆われて晴天の日曜日になりました。守門アメダス観測点における最低気温は-4.2度、日中の最高気温は3.5度となり、久しぶりに見る青空の下たっぷり3時間以上テレマークスキーを履いて、厳冬期のクマ調査(生態痕跡)を実施しました。
その結果、トウホクノウサギやテンなど様々な野生動物の足跡、ニホンカモシカのネヤ(寝屋)とラッセル跡、そしてツキノワグマの爪跡やクマ棚(樹上食座)が見つかりました。新潟県魚沼地方の里山(旧薪炭林)は生き物の気配と痕跡にあふれています。
<左上:冷え込んだ晴天の朝、足元はパウダースノー 右上:調査の相棒はテレマークスキー>
<左下:雪上調査にテレマークスキーは好適 右下:キノコ状の雪形とノウサギの足跡 ※>
※この写真の左手はスギの植林地となっていますが、先週から1頭のニホンカモシカが杉林をネヤ
(寝屋・一時的な滞在場所、豪雪時のシェルター)として利用しています(個体も確認済み)。
<左:ニホンカモシカのネヤ(寝屋)に続くラッセル跡 右:カモシカの足跡も確認可能>
<左上:里山でも風雪の強い尾根筋にはブナが卓越 右上:越後から会津にかけて続く山々>
<左下:横向きのクマの爪痕は冬眠場所を暗示? 右下:森の中にある新旧様々なクマの爪痕>
当方が「里山のツキノワグマ」の定点調査区としているエリアは集落や水田、観光施設に近い標高500m前後の旧薪炭林です。2m以上の積雪に覆われる冬期であっても、テレマークスキー(山スキー)を移動手段に用いると広い範囲を効率的に調査することが出来ます。そして豪雪に覆われる冬期間は、安全に(クマは冬眠中であり、森の中の見通しも良い)ツキノワグマの生態を調査できる季節でもあります。調査毎に見つかるフィールドサイン(生態痕跡)は様々な情報を私たちにもたらしてくれます。
この定点調査区では毎年のようにツキノワグマの目撃情報が報告されますが、森に残されたクマの痕跡を調査すると「昨年秋の新しい爪痕や熊棚(樹上の食座)」から「10年以上前の古い爪痕」まで様々なフィールドサインが見つかります。
この旧薪炭林では最後の薪炭伐採から30年以上経過しているようですが、豪雪環境にあって積雪に強いブナやコナラ、オニグルミ、シバグリ(野生のクリの木)、ホオノキ、ミズキ、ウワミズザクラ、タムシバなど「ツキノワグマへ餌資源を供給する多様な樹種」が再生しています。そして新潟県魚沼地方について言えば「ツキノワグマは奥山にも里山にも生息しており」、「親子クマの目撃情報」や「里山(旧薪炭林)の生態痕跡等」から考察すると「ここ10年ほどのツキノワグマの里山への定着(又は高頻度の利用)」が強く示唆されます。