自然観察ノート 2021.08.03「今年はブナアオシャチホコとクロカタビロオサムシが大発生!」

 表題の通り、今年(2021年)の浅草山麓エコミュージアム周辺ではブナアオチャチホコ(蛾の幼虫)とクロカタビロオサムシ(肉食性の黒いオサムシの一種)が数多く観察されています。特にブナアオシャチホコの幼虫は名前の通り「ブナの葉を広範囲に食害」しており、普段であれば薄暗いくらいのブナ林の中が、まるで春の芽吹きの頃のような明るさになっています。またブナアオシャチホコの幼虫の食欲は旺盛で、毎朝観察路を掃除しているにも関わらず「大量のフンを真下に落としています」。過去にもブナアオシャチホコの大発生が何回かありましたが、そのタイミングは「ブナの開花年(3〜4年毎)」のサイクルに呼応している印象があります。ブナの木は開花と結実に多くのエネルギーを必要とするが故に、ブナアオシャチホコの食害を阻害する物質の量が葉の組織内で不足気味となり、結果としてブナアオシャチホコの大量発生をもたらすのでしょうか?毎回の事ながら不思議な現象です。

(過去の発生年の様子はこちら

 

<左上:すっかり夏模様の浅草岳 右上:ブナ林で鳴き誇るエゾゼミ>

<左下:ヒメギスの仲間 右下:ミカドフキバッタかな? 夏の園内は昆虫の王国です>

 

 さて、大規模に食害されたブナの葉を見ると心配になる方も多いようですが、年によっては「ブナの葉が夏の間に二回目の展葉(芽吹き)を行う場合」もあるようです。そして大量のブナの葉を食害したブナアオシャチホコの幼虫ですが、冬までにはサナギになって地中で越冬するようですが、個体密度が高まるとウィルス性疾患等で死滅する個体も多いようで、翌年までブナアオシャチホコの大発生が継続することは、当地では未だ確認されていません。こうした個体数の増減と調整効果の仕組みには未解明な点が多々ありますが、自然観察の対象として興味深い現象です

<左上:ブナアオシャチホコ(蛾)の幼虫 右上:幼虫を捕食するクロカタビロオサムシ>

<左下:ブナの葉が食害され園内は眩しいくらいの明るさ 右下:今年はヤマブドウが豊作>

 

※クロカタビロオサムシの成虫ですが、他の捕食者から逃れるためか「強烈に臭い液体」を体から出しますので、素手で触らないほうが良いです。