今日(2021.06.08)の新潟県魚沼地方は風も無く穏やかな朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は13.3度、日中の最高気温は23度と予想されています。もしかしたら俄雨(にわかあめ)も降るかも知れません。
さて、昨年の夏からフィールドサイン(生態痕跡)を追っている定点観察地点(エコミュージアム園内ではありません)で行動しているツキノワグマですが、今シーズン初めて以前からマークしていた水田脇の湿地で「ミズバショウの葉や果穂への食害(食痕)」を発見しました(※)。食痕は2〜3日前のちょっと古いものから、昨夜から今朝にかけて形成された新しいものまで複数あります。また食害されたミズバショウにはツキノワグマ特有の「三段噛みした歯型」が残っています。この湿地へのアプローチルートは主に南西側と思われますが、里山(旧薪炭林)で生長を続けているブナやコナラ、ホオノキ、ミズキなどの多様性に富んだ森や湿原がこのクマの主要行動圏となっているようです。
※耕作中(代掻き作業)の水田脇でのツキノワグマの食痕(行動痕跡)であることから、この発見情報は魚沼市生活環境課へ連絡済みです。
<左上:水田のすぐ脇までツキノワグマが来ています 右上:クマはミズバショウを食害>
<左下:クマはミズバショウの葉や果穂を摂食 右下:周囲の森はミズキが花盛り※>
※ミズキの実もツキノワグマの餌資源となります。
この旧薪炭林は昨冬の積雪期にほぼ全域をテレマークスキーで調査しましたが、新旧様々なツキノワグマのフィールドサイン(爪痕、フン、足跡、食痕等)が見つかっています。またここ数年は親子グマや子グマの目撃情報も複数寄せられており、複数年にわたって「里山で出産・仔育てしている母グマの存在」も示唆されます。
この定点観察地点の旧薪炭林もそうですが、戦後の燃料転換によって伐採されなくなってから50年以上経過したことで、かつての薪炭林は今では随分立派な森になっています。様々な植物が存在する(=クマの餌資源が豊富に存在する)森が出現すれば「森林性の大型哺乳類であるツキノワグマが分布を拡大し、個体数が増加するのは当然の帰結」です。
<左上:旧薪炭林は50年以上経過し立派な森へ 右上:奥山にも水田脇の里山にもクマが生息>
都市部で生活する方の中には、高度経済成長期やバブル経済の頃の乱開発や森林伐採の印象が強く残っている方もおられると思いますが、令和時代の新潟県魚沼地方は「森林・生物資源(バイオマス)が蓄積を続ける時代」となっています。近年のツキノワグマの市街地への出没やニホンイノシシの個体数激増は、「戦後の燃料転換による化石燃料主体の時代」「人里近くの里山(旧薪炭林)で森林・生物資源(バイオマス)が蓄積を続ける時代」を反映しているのかも知れません。