昨日(2021.03.27)は天候も安定した土曜日ということで、休日を利用して「里山のツキノワグマ」の故郷とも考えられる「守門山系の奥山である守門黒姫(1,367m)山麓」のラインセンサス(生態痕跡調査)を実施しました。その結果、ツキノワグマの新しい足跡は「冬眠明け前」のため未発見でしたが、「ブナの原生林に残されているツキノワグマの新旧の爪痕」や、「冬眠に使用可能な樹洞等」を数多く確認しました。
<左上:守門黒姫の北側はブナの原生林が残されています 右上:守門黒姫の南側にもクマの爪痕あり>
<左下:ブナの原生林にはクマの痕跡が濃厚です 右下:左沢谷地にあるブナとシロヤナギの大木>
<左上:原生林はクマの爪痕だらけ 右上:ブナの幹には数十年分のクマの爪痕が残されています>
<左下:左沢谷地のシロヤナギにあるウロ 右下:夏には笹原となる左沢谷地もクマの気配が濃厚>
守門黒姫(1,367m)の北側は信濃川水系の一級河川である破間川の源流域ですが、豪雪地帯であることと馬蹄形の山容によるアクセスの悪さから昭和30年代の森林伐採からも除外されました。このため破間川源流域には樹齢数百年と思われるブナの原生林(または原生的な森林)が存在します。また守門黒姫の北東側に位置する左沢谷地(ひだりさわやち)も夏には笹原が広がりますが、豪雪地帯の湿原性植生に由来するシロヤナギやブナの巨木が残されています。
「越後の奥山にあるブナの原生林」の調査に一番適した季節は3月下旬から4月中旬にかけての残雪期ですので、例年のコース通りテレマークスキーを用いて広い範囲を一気に調査しました。今回のラインセンサスの概要は、手元のGPSのデータで「累積標高1,281m、移動距離19.2km」となっています。
ネット上の言説では「人間の開発行為により奥山にはクマの住処は無い」「クマの生息地は奥山が空白となったドーナツ化状態」「奥山の調査は誰も実施していない」というものもありますが、当地(新潟県魚沼地方)について言えば、今回のラインセンサスが示す通り「現在でも越後の奥山はツキノワグマの王国(基盤生息地※)である」と判断しています。新しいものも含めて、ブナの巨木にはツキノワグマの数十年分の爪痕が残され、また冬眠に使用可能な大木(主にブナとシロヤナギ)のウロも各所に存在しています。越後の奥山はツキノワグマの気配が大変濃厚です。
ツキノワグマの生態については未解明な点が多々ありますが、今回の実施分も含めてフィールド調査で得られた知見により、「里山と奥山に生息するツキノワグマの謎」をひとつひとつ解き明かしてゆきたいと思います。
※守門岳の奥山エリア(無雪期)についての記述はこちらを御覧下さい。