今日(2021.02.28)も晴天の日曜日ということで、雪面が硬く締まった午前中に、「守門岳南麓エリアにある定点観察地点」の雪上調査を実施しました。
<左上:奥山の守門岳が真っ白に輝いています 右上:雪上調査にはテレマークスキーが最適>
<左下:以前見つけたイノシシのエサ場は留守の模様 右下:2週間前にイノシシがいた杉の木のネヤ(寝屋)>
さて、里山のツキノワグマの「冬眠明けのエサ資源のひとつ」として、「ニホンイノシシの斃死体(凍死・埋没死)」が考えられるとすれば、これは是非ニホンイノシシの斃死現場を発見したいと思い、今日も雪上調査を行います。折角ですので、調査エリアを東に広げてみるとこれが大正解。昨日の仮説(豪雪による2月中旬のイノシシ大量死説)があっさりと1日で覆される結果となりましたが、それ以上に調査毎に「新たな知見が増えてゆく」のがフィールド調査の醍醐味です。
<左上:水田跡と杉の植林地の間にイノシシの足跡発見 右上:イノシシの新しいフン>
<左下:湿地で採食していたイノシシ約10頭が一斉に逃走 右下:その際に撮影したニホンイノシシ>
※イノシシの撮影は、斜面上部の安全な位置から距離を確保し、細心の注意を払い実施しています。
今まで調査していなかった場所(湿地と杉の植林地が含まれる里山エリア)で、ニホンイノシシの新しい足跡とフンを発見しました。そして慎重に湿地に近づくと、当方のスキーの滑走音に気付いたのか体長1m程のニホンイノシシが「ひょい」と雪壁から顔を出してこちらを見ています。当方との距離は20mほどありましたが、イノシシから攻撃されてはひとたまりもありませんので、こちらから「ほい!ほい!」と大きな音で注意を向けると、その1頭に続いて10頭ほどのニホンイノシシの群れが一列になって湿原の下流方向にある杉の植林地に向かって逃げて行きます。
イノシシに不用意に近づくのは大変危険ですので、当方は斜面上部の安全な位置から距離を確保し、湿地と杉林を見下ろすかたちでイノシシの群れの様子を撮影しました。
昨日の調査では「2月中旬の3メートルを超える豪雪によりイノシシが斃死(凍死・埋没死)した可能性」を思案していましたが、ニホンイノシシはこの豪雪環境にある里山エリアで逞しく生き抜いていました。同時に、ニホンイノシシによる春以降の農作物への被害(獣害)が心配です(※1)。
今や集落のすぐ近くの里山(旧薪炭林)もイノシシやツキノワグマの行動圏となっています。農作物への獣害や、ツキノワグマとニホンイノシシによる人身被害を防止するためには、野生動物への給餌となる行為(不要な農作物、ドングリなどの屋外放置※2)は行わないことが基本姿勢となります。
※1 今回のイノシシ10頭の越冬群については、魚沼市生活環境課へ通報済みです。
※2 ニホンイノシシはデンプン質を多く含んだドングリが大好物です。
<左上:直径1m程のシロヤナギの大木には・・ 右上:クマの冬眠場所と成り得る立派な樹洞あり>
<左下:この旧薪炭林にあるホオノキには・・ 右下:昨年に形成されたツキノワグマの新しい爪痕>
そして今回、この里山エリアで初めて「ツキノワグマの冬眠場所と成り得るシロヤナギの大木に形成された立派な樹洞(内部直径約80cm)」を発見しました※。今シーズンの大雪で太い枝が折れたことで「今まで外部からは見えなかったシロヤナギ内部の樹洞が表出した」ようです。この樹洞は今後、この里山で行動するツキノワグマの冬眠場所となる可能性が見えてきました。また、沢沿いのシロヤナギ群落に注目すれば、このような大きな樹洞はこのエリアに複数存在していると思われます。
「ツキノワグマの里山への定着を構成する要素」として、こうした「冬眠(冬篭り)場所の存在」が大きな意味を持ちます。
雪上でのフィールド調査は夏期と比べて調査可能範囲がぐんと広がります。フィールド調査は発見の連続です。
※ツキノワグマの冬眠場所(使用の有無を問わず)には、安全管理上一般の方は絶対に近づかないで下さい。
またこの樹洞には「クマが入り口をシバ(柴)で塞いだ形跡」があるようにも見えますが、クマの使用の有無を含めた確認作業は大変危険なため、以後の調査は「冬眠明け」となる5月以降になります。