里山のツキノワグマ 44 〜クマを市街地へ押し出す力は何? 直径1kmのクマの雨傘〜

 今朝(2020.10.20)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の早朝定点観察を実施しました。守門アメダス観測点における最低気温は6.8度と冷え込みもちょっと和らいだ感じです。

 

<この里山エリアではイノシシによる獣害も発生しています。土中のミミズを探して採食したのでしょうか、田んぼの畦がイノシシによって大きく損傷しています>

 

 さて、ここ数日人里にある屋敷林やショッピングセンターの店舗にまでツキノワグマが侵入する事案が報道されています。新潟県魚沼市で昨年(令和元年10月)発生した市街地におけるツキノワグマによる人身被害の事案でも、そのすぐ近くには大きなショピングセンターがありましたので、ツキノワグマの出没が連続すると、こうした「ツキノワグマによる市街地の店舗への侵入事案」は今後も各地で発生する可能性があります。

 昨日のブログでも御紹介しましたが、クマの出没が頻発すると「ツキノワグマのナワバリ(テリトリー)の存在」について、その有無が注目されます。人里や市街地へのツキノワグマの出没事案を概観すると、「子連れの母クマ」や「親離れして数年の若クマ」、あるいは「親離れ直後の子クマ」の存在が目立ちます。また近年の調査研究では「オスのツキノワグマによる他のファミリーの子クマ殺し」も報告されるなど、こうした現象を忌避する意味でも「ツキノワグマの個体間距離の確保に関する何らかの作用」があるものと推察されます

 当方の定点観察では「ツキノワグマ間の闘争シーン」は観察したことはありませんが、ツキノワグマによるマーキング行為は各地で報告されています。群れを形成しないツキノワグマに「ツキノワグマの個体間距離の確保に関する何らかの作用」があるとすれば、当方では「ツキノワグマが直径1kmほどの雨傘※をさして移動している姿」をイメージしています

 つまり、ツキノワグマには「その土地に固着した形態でのナワバリ」は無いものの、採食行動のために移動した先々においては「個体間距離の確保に関する何らかの作用」が「直径1kmの雨傘」のように「押し合い圧(へ)し合いしながら」、「移動式のナワバリ確保装置」として作用しているのではと考察しています。仮にそのツキノワグマ個体群の中で圧倒的に強いツキノワグマがエサ場に存在した場合、エリア全体のエサ資源の枯渇に至るかなり前の段階であっても(実際に里山にはエサ資源はまだまだ沢山あるのですが)、その強いクマの雨傘(移動先のナワバリ確保の行為)に押されて「親子クマ」や「若クマ」が人里や市街地へ押し出されてしまうのかも知れません

 

※直径1kmの個体間距離は、当方の定点観察地点における考察による仮の数値です。