里山のツキノワグマ 5 〜庁舎通用口から50mのカキの木にもクマの痕跡〜

 昨年度の事ですが、旧入広瀬村庁舎(現入広瀬会館)の通用口から50mの距離にある小さな柿の木にもツキノワグマの痕跡(爪痕・枝折り)が発見されたことがあります。当地(新潟県魚沼地方)は広い里山(旧薪炭林)とブナの天然林を有する豪雪地域ですが、集落内の屋敷林には多くのカキ(柿)の木があり、昨年度は屋敷林のカキの木にもツキノワグマが訪れていました。

 カキの木の枝は大変折れやすく、「クマが登った柿の木」は盛大に枝を折られるため「身をすくませたような特徴のある樹形」となります。この柿の木は枯れずに今年も多くの実を付けていますが、住宅地にある柿の実を第三者が勝手に採ることはできず、結果としてツキノワグマの誘引物ともなってしまいます。またそのすぐ横には大きなクリの木もあり、こちらも沢山の実をつけています。「桃栗3年柿8年」と言いますが、集落内にある「品種改良されたクリの木やカキの木」は成長が早く多くの実をつけるため、「里山に暮らすツキノワグマ」にとって「人間と遭遇する危険をおかしてでも採食したい魅力的なエサ資源」なのでしょう。

 昨年度は魚沼市の市街地でのツキノワグマの大量出没と深刻な人身事故の発生もあり、行事の中止や安全パトロールの実施など、多くの影響がありました。個人的にも小型四駆(丸腰状態は大変危険です)を使って夜明け前後(薄明時)のツキノワグマ調査を車内から行いましたが、屋敷林にあるカキの木は「最も警戒すべき場所」のひとつとなっています。秋本番に向けて、今後ツキノワグマの採食行動もより活発になると思われます。ツキノワグマによる人身事故を予防するためには、「カキの実の早めの収穫」と「不要なカキの木の伐採」が大変有効です

 そして里山のツキノワグマに対しては「小型四駆による重点監視箇所(人家の周辺や通学路、出没頻発場所、林道など)の巡視」や「林縁部の藪払い(偶発遭遇事故の予防)」、「爆竹やプロパンガス音響装置などを用いた追い払い」などで、駆除に至る前段階からクマに対してプレッシャーを掛け続ける必要があるように思いますし、場合によっては「ツキノワグマの行動圏となっている集落周辺の旧薪炭林」の強間伐も検討する段階かも知れません

 

<昨年度は庁舎通用口から50mの距離にあるカキの木にもクマの痕跡がありました>

<今年も集落内のカキの木にはたくさんの実がついています 2020.09.03撮影>

 

<屋敷林にある栽培種のクリの木もたくさんの実をつけています 2020.09.03撮影>

 

<カキの木にできたクマ棚 カキの木の幹には新旧の爪痕がくっきりと残る 2019年撮影>