早起きは三文の得 〜当地におけるツキノワグマの出没要因が判明〜

 今日(R02.08.18)の新潟県魚沼地方は雨上がりの朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は23.1度、日中の最高気温は30度と予想されています。木陰が恋しい季節です。

 さて、連日当地(エコミュージアム園内ではありません)で目撃されていたツキノワグマ(※)ですが、雨上がりの今朝(2020.08.18 06:40)フィールドを調査した際に、「オニグルミの殼が混じったツキノワグマのフン(糞)」を発見しました。発見場所は一昨日に目撃情報があった地点から西側に500mほど離れた場所で、県道の路側白線の真上です。フンの大きさ(量)は大人用のラーメンどんぶり1杯分ほど。とても新鮮(微妙な表現ですが・・)なフンで、雨で流れておらず、虫も寄っていないことから「今朝(薄明時)排出されたフン」と思われます。

 

<オニグルミの外殻が混じったツキノワグマのフン 発見場所は県道敷の目立つ位置にあることからナワバリ主張と示威行為のマーキングの可能性あり>

(本ページの写真はクリック操作で大きく表示されます)

 

 このフンについては、その構成量比としておよそ80%がオニグルミの外殻、20%がオオバセンキュウなどのセリ科の植物と思われます。このフンからは小動物の骨片や体毛は確認されていませんが、だからといってツキノワグマが植物しか食べないということでもありません。ツキノワグマは広く山野を移動し、その土地の季節毎のエサ資源を巧みに利用していると考えられます。このフンの内容物調査から分かることは、「新潟県魚沼地域においては(8月下旬の硬くなった)オニグルミの実を主たるエサ資源とし、集落内のオニグルミ群落(森)をコリドール(通路)として利用するツキノワグマの個体が存在する」という事実です。

<ツキノワグマの出没地点付近で撮影したオニグルミの実とフンの内容物調査の様子>

(この写真は全て2020.08.18に新潟県魚沼地方で撮影しました)

 

 発見場所は里山から河畔林にかけて広く列状に分布するオニグルミ群落の終点付近。広さ10m四方の薮(ヤブ)とシロヤナギ(?)がセットになった場所が真横にある県道敷の上です。また周囲の薮にはツキノワグマの獣道が数多く確認できます。この個体は県道の目立つ場所に堂々とフンを排出していることから「ツキノワグマの成獣が”自身のナワバリのマーキング”としてフンをした可能性」もあります。このブログでも度々言及していますが、新潟県魚沼地方の旧薪炭林(里山)は戦後の燃料革命を転機として、どんどん森林が成長しており、「ツキノワグマをはじめとした様々な野生動物のエサ場・行動圏」となっています。また大小様々な河川を有する新潟県魚沼地方では河畔林も広く分布していますが、この河畔林に育っているオニグルミの群落(森)が「ツキノワグマの格好のエサ場と通路」になっているようです。

 ツキノワグマの出没やその後の駆除の報道などに際し、「実のなる木を奥山に植えたらいいんじゃないか」とか「人間が奥山を荒らしたからツキノワグマが里に出てくる」という主張を目にしますが、実際にフィールドで調査した結果はむしろ逆で、「里山がどんどん成長し、ツキノワグマにとって良質なエサ場となっている事が、ツキノワグマの人里への出没要因のひとつ」と判断されます。また個人的には「お盆の時期を過ぎて硬くなったオニグルミの実であっても、ツキノワグマはこれを採食する事が実証されたこと」が大きな発見でもありました。

 参考:「オニグルミの群落形成のしくみ」についての過去の記述はこちらです。

 

<奥山から里山、河畔林、人里をつなぐコリドール(通路)としてのオニグルミの群落 当地ではクリの実もたくさん実っています>

※住宅地や小・中学生の通学路、多くの方が利用される観光施設、老健施設に隣接する場所(施設まで約100mほど)でのツキノワグマの出没という事で、本事案については地域住民の方の安全確保の観点から既に「有害駆除の許可」が為されています。