秋の虫とローマ時代の人工知能

 今日(R01.09.10)の新潟県魚沼地方は朝から青空が広がる穏やかな天候となっています。守門アメダス観測点での最低気温は20.0度(04:20)ですが日中は30度を超える予報となっています。里山の定点観察地点では、クズの赤紫の花やツユクサの藍色の花が目を引きます。そして足元の草むらからはコオロギなどの虫たちが恋のメロディーを奏でています。

 さて、先日の朝日新聞朝刊(2019.09.08)に「歴史学者ハラリ氏の警告 AI支配 大半が”無用者階級”に」との記事が掲載されていました。記事ではヘブライ大学教授のユヴァル・ノア・ハラリ氏の見解として「テクノロジーと独裁が融合し、個々人のデータを支配する社会」が到来し、その場合「雇用市場の破壊により多くの市民が無用者階級となる危険性」を指摘しています。何とも不気味で恐ろしい未来図です。

 世界史上最も強大な帝国のひとつとして「ローマ帝国」があげられます。パックスロマーナ(ローマによる平和)と言われる時代やローマの五賢帝については、高校時代の世界史でも定番とも言える題材ですが、仮に「ハラリ氏が提示した人工知能が五賢帝が治めていたローマ時代」にあったら、果たして歴史はどんな結末を迎えていたのでしょうか。人民に配給する穀物は最適化され、「民衆の反乱や支配地域での蜂起は未然に防げた」のでしょうか。また自分を暗殺しようとする人物のデータ分析から「全ての暗殺計画は事前に察知され政変は起こらなかった」のでしょうか。また技術面では「人力で進むガレー船は一気に改良され、鋼鉄で出来た船体にディーゼルエンジンを搭載した地中海最強の近代戦艦が生まれた」のでしょうか?

 「常に正しい選択を示す人工知能」があったとしても、ローマ時代の歴史的背景から考えると「地球規模での資源開発や科学技術の均衡的な発展、市民の教育レベル向上、民主的な社会運営のシステム」等が伴わない限り、「ローマ時代の人工知能」が果たす役割は「口の上手い占い箱」くらいの扱いに留まるかも知れません。

 さて、足元で涼しい音を奏でる秋の虫たちですが、当然かれらには人工知能は搭載されていません。「ほんの小さな神経細胞の集まり」が脳として機能し、生存のためにプログラムされたシンプルな行動原理により「羽を擦り合わせて音を発生させ」、その「音の刺激が各個体の行動に作用することでオスとメスが出会い」、また「新たな命として世代を重ねて」ゆきます。

 「人類の未来に人工知能は必要なんだろうか?」「ローマ時代ではどうかな?」そんな事を思案した秋の朝です。さあ、今日も頑張りましょう。

 

※約1年前に記述した「人工知能と秋の詩情」「条件反射」についての記事はこちらです。