今日(2021.06.07)の新潟県魚沼地方は梅雨入り前の爽やかな朝を迎えています。守門アメダス観測点における最低気温は14.3度、日中の最高気温は28度と予想されています。朝晩は涼しくとも日中は半袖シャツで丁度良いくらいの気候です。
<左上:オオヨシキリの声が響く初夏の里山 右上:当地ではオニグルミの実りも順調>
<左下:美味しそうなヤマグワの実がたくさん 右下:アザミspの花、神々は細部に宿る>
さて、新潟県魚沼地方の里山も初夏の装いとなり、アザミの花や美味しそうな桑の実で彩られています。また定点観察地点(エコミュージアム園内ではありません)のオニグルミの実も写真の通り順調に推移しています。オニグルミの青い(緑色の)実はツキノワグマの大好物ですが、里山や河川敷、農道、人家周辺にある「桑の実(クワイチゴ)」もまた子グマの大好物です。ツキノワグマの親子(母グマと子グマ)は出産から約1年半の間行動を共にしますが、子グマが1歳の初夏の頃に「親離れ・子離れ」を迎えます。子育てを終えたメスグマはこの直後にオスグマと交尾し、秋以降の摂食状況(餌資源の獲得量)に応じて子宮内へ受精卵が着床するかどうかが決定されるようです。
野イチゴが実る初夏の時期は「親離れしたばかりで警戒心の少ない子グマが観察(発見)されやすい季節」でもあります。「野イチゴの盛期」と「ツキノワグマの親離れ・子離れ(ひとり立ち)」を関連付けて、東北のクマ猟師の方々は「母グマが子グマに野イチゴの場所と食べ方を教え」「子グマが野イチゴの美味しさに夢中になっている間に母グマはそっとその場を去り」「初夏にツキノワグマが親離れ・子離れの時機(とき)を迎える様子」を「クマの苺落とし」として情感たっぷりに捉えています。
近年東日本や北陸地方の各地でツキノワグマの市街地への出没や目撃が相次いでいますが、「人里近くで子グマが頻繁に目撃される背景」には「人里近くの里山で出産・子育てする母グマの存在」が浮かび上がってきます。前述の通りツキノワグマの繁殖生理から見ても、親子グマの存在はそれ自体「ツキノワグマの栄養状態が良好である=十分な餌資源がその場所(雪消えが早く植物の種類が多い里山周辺)に存在している」ことの証明でもあります。
都市部で生活している方の中には「日本の山々は開発され尽くして荒廃の極みにあり」「そのためにツキノワグマが最後の力を振り絞って人間に助けを求めるが如く人里に出没している」というように捉える方もおられるようですが、実際にフィールドでツキノワグマの行動痕跡を調査すると、新潟県魚沼地方では「オニグルミやクワイチゴなど、春から秋まで様々な餌資源が里山にも奥山にも存在している事実」に気づきます。また令和3年はブナの開花年となり、このまま順調に推移すれば秋には3年ぶりにブナの結実が観察出来そうです。一般的には「ツキノワグマの主食はドングリ」というイメージが先行していますが、実際のツキノワグマは奥山でも里山でも様々な餌資源を巧みに活用しています。