今朝(2021.04.29)は休日を利用して冬期閉鎖解除となった「国道252号線・六十里街道」の新潟県部分をクルマで巡ってきました。残雪の模様の中にイタヤカエデの新芽やブナの花芽と新緑が雨に濡れて美しく、そして天然のオオヤマザクラは開花5分ほどでしたので、明日以降の晴天が望まれるところです。
さて、家に帰って録画済みの番組を整理し、NHKで昨年10月に放送された「中国秘境 謎の民木馬氷上を馳(は)せる」を再度視聴しました。確かこの番組を録画した動機も、「テレマークスキーのように、歩行と滑走とを両立させた、踵が上がる山スキーの元祖」とも言われる、中国側のアルタイ山脈で使用されている「トゥバ族」の「アルタイスキー(木の馬)」が紹介されていたからでした。番組ではトゥバ族のお父さんが自分の庭先でアルタイスキーを製作する様子が紹介されます。最初に中国原産のシロマツの原木を板状に加工し、更にその先端を熱湯で上向きに曲げ(トップベンド)、滑走面には馬の毛皮を釘で張り付けて、現代の山スキーで言うところの「登坂用のシール」まで装備されています。そして歩行と滑走の際には木製の一本杖を使用しています。新潟県出身の方であれば、明治時代に上越市(高田)を訪れたオーストリア・ハンガリー帝国の軍人であるレルヒ少佐と、その際に披露された「一本杖スキー」との共通点に驚くことと思います。
昨冬のツキノワグマに関する冬期調査では当方もテレマークスキーの利便性に大変重宝しましたが、積雪地域である中国側のアルタイ山脈地域と新潟県魚沼地域で共に「歩いて滑るスキー(中国ではアルタイスキー)」が似たような条件下で使用されていることに感慨深いものがあります。
自然観察と野外活動とは密接な関係があります。以前のブログでも言及しましたが、ゲレンデスキーが一世を風靡した日本では「スキー場でリフトを用いて登り、圧雪された斜面を滑るゲレンデスキーが本当のスキー」という認識の方も多いように思います。それゆえに、冬期登山や山スキーでの遭難事案等に際しては時に「スキー場以外の場所でスキーをするとはけしからん」という意見が散見されます。しかしながら、中国側のアルタイ山脈で約1万年前からトゥバ族の皆さんが行っているアルタイスキー(歩いて滑るスキーの元祖)の映像を見ると、文化人類学的視点や広い視野での博物館活動、あるいは野外活動技術としてのアウトドアスポーツの意義や普及振興の大切さを痛感します。