里山のツキノワグマ 74 〜見晴らし台から定点調査地点を俯瞰、ここにもイノシシが!〜

 昨日(2021.01.21)は魚沼市理科教育センターの先生方をフィールドへ御案内し、素晴らしい晴天の条件で冬期自然観察を実施しました。

<左上:出発地点「道の駅いりひろせ」> <右上:破間川が貫流する広瀬谷を一望>

<左下:浅草岳を遠望> <右下:守門大岳から守門袴岳を遠望>

 

<左上:テンの足跡> <右上:ホンドギツネの足跡(並足と駆け足)>

<左下:ニホンイノシシの足跡(探索行動?)> <右下:キツネとイノシシの足跡の十字路>

 

 当ブログでは何回も言及していますが、「雪面は野生動物の行動を記録する印画紙」です。写真撮影地点は道の駅「いりひろせ」から出発して僅か300m程の距離ですが、雪面には真新しいホンドギツネの足跡やテンの芸術的な足跡が多数残されています。ネット上には「山の木の実は全滅」「森には動物の気配は一切無し」といった極端な言説もあるようですが、こうして観察フィールドに赴けば「実際の自然の姿」をライブで実感出来ます。雪面の足跡が示す通り、新潟県魚沼地方では、「一般の方が思っている以上に野生動物が私たちの近くに生息し、活発に行動している」ことが分かります

 

<左:杉林から横に伸びるイノシシの足跡> <右:イノシシの足跡(雪中に残るヒヅメの跡に注目)>

 

 そして上記の写真にもある通り、今回もイノシシの足跡(カモシカよりも歩幅が小さいのが特徴)を確認しました。イノシシの足跡から推理すると、「2mを超える積雪に閉じ込められたイノシシが杉林に避難しており、吹雪の後に周囲の様子をうかがったものの、この豪雪環境からの脱出が叶わず未だこの周辺に停滞している」と思われます。既に様々なメディアで広報されている通り、積雪期のイノシシによる攻撃(人身被害)に十分御注意下さい(今回のイノシシの足跡は、魚沼市役所生活環境課と道の駅には通報済みです。またこうした「豪雪環境に閉じ込められたイノシシ」が春までに斃死した場合、「里山で行動する冬眠明けのツキノワグマ」のエサ資源となる可能性もあります。

 

<左上:守門岳と藤平山> <右上:当方のツキノワグマの定点観察エリアを俯瞰>

<左下:定点観察エリアを俯瞰(ちょっとアップで)> <右下:定点観察エリアのオニグルミ群落の一例>

 

 現在調査中の「里山のツキノワグマ」ですが、その定点観察地点を今回俯瞰してみました。こうして雪上観察の見晴らし台から眺めてみると、「ツキノワグマが生息する定点観察地点の植生は、新潟県魚沼地域では見慣れた里山の姿」であることが良く分かります。そして「ツキノワグマにとって魅力的なエサ資源」である「オニグルミの群落」が河川に沿って発達していることが、当地におけるツキノワグマの出没要因のひとつとなっているようです

 当地では昭和30年代までは集落の周辺にある里山を「薪や炭を生産する薪炭林」として長く利用してきました。このため、集落に近い里山は「標高1,000m付近まで薪炭林として凡そ20年未満のサイクルで伐採されていました」。薪炭林は、伐採後も切り株などから樹木が自然に再生するコナラなどが中心です。そして、薪炭林として利用されなかった標高1,000m以上の高所・冷涼地にはブナの天然林が残されています。また現在では、これらのブナ林は守門岳エリアにおいては「国定公園」或いは「県立自然公園」として、保護されています

 次回は守門岳のコウクルミ沢左岸尾根(通称:南西尾根)をテレマークスキーで移動しながら、守門岳における「素晴らしいブナ天然林の様子」と「里山との境界」を調査したいと思います。