今日(2020.10.28)は地元の小学校のマラソン大会のサポートなどもあり、基本休日だったのですが、それでもいろいろとクマに関する情報が入ってきます。そして今大いに悩んでいる案件が「謎のフン」。場所は国道252号線の新入広瀬橋で、鑑定依頼者は県警小出警察署の方です。何でも地元の住民の方から「昨日、クマのものと思われる大きなフンを国道の橋の歩道で見つけた」との情報です。マラソン大会が終わったその足で、早速現場に向かいます。
<歩道の上には二種類(黒色と灰色)のフンがあり、一方は明らかにタヌキの溜めフンなのですが・・・>
<イチョウの実が大量に含まれている手前にある太くて黒いフンの形状は、確かにツキノワグマのフンにも見えます>
こういう場合は慎重に言葉を選ばなければならないのですが、率直な感想としては、
「ツキノワグマのフンでは無いとは言い切れない(クマの可能性を否定出来ず)」というところでしょうか。明確に回答出来ず、申し訳ありません。記録を調べると、「ツキノワグマがイチョウの実を採食すること」は各地で報告されています。また今回の発見場所は確かに交通量の多い国道の橋の歩道ですが、夜間には随分静かになりますし、この橋の袂にはイチョウの木が複数存在しています。更に、先月にはこの場所から120mほどの極めて近い場所(畑)で「ツキノワグマの足跡と個体目撃情報」が寄せられています。そしてこの「新入広瀬橋のすぐ裏手」には「クマの基盤生息域である守門山系」から伸びる「旧薪炭林の里山が広がっている」のです。このため、「新入広瀬橋付近では毎年のようにツキノワグマの目撃情報があります」。
断定はできませんが周辺の情報を統合すると、このイチョウの実(銀杏)入りの大きな黒いフンはツキノワグマが排出したものかも知れません。国道252号線に架かる新入広瀬橋付近は朝晩のウォーキングや犬の散歩などで多くの方が利用しますので、夜間や薄暗い時間帯は特にツキノワグマとの不意の遭遇に御注意下さい。
<国土地理院のインターネット版地理院地図より>
さて、折角の休日ですので、午後からは紅葉の名所「六十里峠」へ写真撮影です。福島県側から見る浅草岳もまた美しい姿をしています。特に只見沢の周辺は大量の積雪により岩肌が磨かれた「スラブ地形」と「雪食(蝕)地形」が見事です。そして、今回は幸運な事に「湖沼型サクラマス」の産卵に向けたペアリングの様子も撮影することが出来ました。福島県も新潟県も渓流釣りは9月末日をもってシーズンが終わり、現在は禁漁期間です。このため、田子倉湖から遡上したサクラマスやイワナは、釣り人によるプレッシャーから解放されて、産卵行動に集中しています。イワナは複数年に渡り産卵可能ですが、サクラマス(ヤマメ)の産卵は通常は一生で1回きりであり、産卵を終えたサクラマスはまもなくその一生を終えます。そしてその体は流れに乗って、川岸に寄せられるのですが、もしかしたらツキノワグマはこうした「産卵後のサクラマス」もエサ資源にしているかも知れませんね。
<上段左:福島県の只見沢駐車場から望む浅草岳>
<上段右:只見沢沿いに発達するスラブ・雪食(蝕)地形>
<下段左:サクラマスのペア(オス・メス)と、その傍らには大きなイワナの姿もあります>
<下段右:婚姻色の紅色が目立つ体長40cmほどのサクラマスのオス。川底の紅葉も綺麗です>