里山のツキノワグマ 37 〜アケビからのメッセージは「私を食べて」 チャドクガに注意!〜

 今朝(2020.10.14)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の早朝定点観察を実施しました。連日各地でツキノワグマの出没や人身事故の報道があります。ツキノワグマの生息地で早朝の時間帯に生態調査を行うことは「危険地帯に自ら踏み込むこと」ですから、「不用意に自動車から降りない」「写真は車内から撮影する」「自動車から降りる前にはクラクションを5回以上鳴らす」等の安全管理が必須となります。

 

<この調査地では林道脇にたくさんのアケビが実っています>

<美味しそうに口を開けたアケビは遠目からも目立ちます。アケビからのメッセージは・・・>

 

 この定点観察地点の林道脇にはたくさんのアケビが実っています。アケビを食べたことのある方はよく御存知かと思いますが、果肉は確かに甘くて美味しいのですが、「アケビの実の中身はほとんど種」です。甘い果肉はタネを拡散する際の御褒美ですから、アケビの立場からすれば「果肉をちょっとだけ食べさせてあげるから、しっかり種を拡散して下さいね」という感じでしょうか。もちろんツキノワグマもニホンザルもよろこんでアケビの種子の拡散に協力しています。

 ツキノワグマの出没が相次ぐと「奥山に実のなる木を植えればいい」という素直な意見がたびたび寄せられますが、私たちがスーパーや八百屋さんで目にする果実のほとんどは「人間が手間隙かけて育成することが前提」の「品種改良された栽培種です」。また新潟県魚沼地方の場合、薪炭林にならなかった奥山は「豪雪で冷涼な環境」にあり、また様々な野生動物が生息していて採食圧が高く「冷涼な奥山では栽培種のクリやカキの木は生育する見込みが立ちませんし、仮に実が付いてもクマが食べる前に他の動物がさっさと食べてしまうでしょう」。

 ブナやミズナラの実りが豊凶のサイクルを有するのは自然の摂理です。仮に「現在のツキノワグマの生息密度が適正水準を超えている」とすれば、今シーズンの堅果類の凶作は「ノネズミやクマの個体数を調整し、種子の無駄撒きを防ぐマスティング(masting=植物自身による豊凶調整効果)そのもの」とも解釈できます

 

<現在新潟県魚沼地方では所により「チャドクガ」が大量発生しています。ユキツバキの自生地にも「チャドクガ」が発生しています。皮膚炎の原因となりますのでチャドクガの卵や幼虫、成虫に素手で触れないで下さい。>