里山のツキノワグマ 31 〜クマは5.4平方kmの里山エリアに4頭以上生息している可能性あり〜

 今朝(2020.10.09)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の早朝定点観察を実施しました。魚沼市内のツキノワグマの出没情報を分析すると、河畔林や河岸段丘際の雑木林を足掛かりとして、住宅地や市街地の近くにまでクマが採食行動している様子が分かりますなかでも過去の経験から、新潟県魚沼地方におけるツキノワグマの市街地への誘引物は「10月上旬から11月下旬までは柿の実が主体となると思われます」。このため、住宅地の周りの柿の木を中心とした早朝巡回調査(出勤前)も今回から実施しています。時間と労力の関係で全ての集落を巡るのは不可能ですが、過去の出没事案を参考に「要点を押さえた調査」を行いたいと思います。

 また先日は地元の新潟県警小出警察署の皆さんと情報交換し、「里山に生息するツキノワグマの生態」と「魚沼市における現在までの出没事案のケーススタディ」、そして「市民・警察官の方の安全確保とクマへの警戒活動の要領」など具体的な対策にまで踏み込んで協議しました。日々地域の安全を担って下さっている県警の皆さんに深く感謝申しあげます

 

<10月からから11月にかけて、市街地にある色づいた柿の実がツキノワグマの誘引物となります

 

 さて、本日の調査では環境行政の大先輩であるAさんから、再び貴重な情報をいただきました。それは「親子グマのものと思われるフンの発見です」。ツキノワグマの幼獣は約1年半の間、母クマと共に行動し、エサの探し方やねぐらの場所の選び方など、「クマとして生きるための知識」をこの1年半の間に学習してゆきます。当方の調査で見かけるフンは「大きな単独行動のクマのフン(マーキングも兼ねる?)」が多い印象ですが、これとは別に「大きなフンと小さなフンが並んだ形態のフン塊(親子クマの存在を示唆)」をAさんが2日前に確認して下さいました。9月上旬から現在までの観察結果や地域の方から寄せられる目撃情報を総括すると、この5.4平方kmの定点観察エリアには成獣2頭、幼獣2頭の計4頭が生息している可能性があります。もちろんツキノワグマは常に広いエリアを移動しながら採食していますし、同じ個体を数日後に別の場所で重複してカウントしている場合もあり得ます。

 この他にもニホンザルやニホンイノシシもこの調査区には多数生息しています。一般には「山には動物のエサが無い」とか「人間が奥山を開発したからクマが人里に下りてくる」と言われますが、コシヒカリの里」としても知られる新潟県魚沼地方は、豊富な年間降水量と夏場の安定した日照・積算温度が特徴的な日本海側の多雪地域であり、その水田の周辺にある旧薪炭林(里山)のエサ資源の総量とポテンシャルは私たちの想像以上なのかも知れません。いずれにしても今後の調査でより確度の高い情報が得られると考えます。