里山のツキノワグマ 27 〜眠る人里、点在する柿の木、迷い込むクマ〜

 先日は夜明け前の魚沼市内を自動車で通過しましたが、10月上旬の午前4時頃は行き交う車も少なく、国道252号線の約20km区間では通過車両はわずか数台であり、それもほとんどは新聞配達の方の自動車とバイクでした。午前4時の魚沼盆地を小高い丘の上から見ると、所々街灯や幹線道路の照明はあるものの「静かな湖」のように「平野部の暗い空間」が広がっています。そしてその周囲には50年以上ほとんど伐採されていない広大な旧薪炭林(魚沼地方では”ボイ山”と呼称)が広がっています

 今日(2020.10.05)は魚沼市広神地区の広神西小学校から200mほどの距離にある「農地と道路の境目付近」でツキノワグマの目撃情報が寄せられています。この国道252号線の広瀬谷区間の両脇には集落の住宅と水田が混在していますが、今の季節は「色つき始めた柿の木」が人家の周りで目立ちます。里山に残されたフィールドサイン(生態痕跡)である熊棚等の観察結果から、ツキノワグマは先週くらいから「柿や栗への食性が高まっています」。そしてツキノワグマは人家付近に植栽された柿や栗の実を求めて夜明け前の人里エリアに侵入します

 ところが、「ツキノワグマがエサ資源を求めて人里深く侵入してしまう」と「時に人里で夜明けを迎えてしまい」「行き交いはじめた自動車や大勢の人間に山への帰還ルートを遮断され」「結果として帰還ルートを探し回って市街地を彷徨う(人身事故の発生が懸念されます)こととなります」

 

<里山を行動圏とする新潟県魚沼地方のツキノワグマの食性は、10月には柿の実や栗の実への嗜好が高まっています>

<当地の里山エリアで栽培されている栗の木にはツキノワグマが頻繁に訪れおり、現場に堂々とフンを残しています>

 

 ツキノワグマの人里への侵入ルートは(多くの場合)「里山エリア」と「人里エリア」とを結ぶ「河畔林」や「河岸段丘際の雑木林」です。こうした場所がツキノワグマに対する防衛ラインの要衝(危険箇所でもあります)となっていますまたツキノワグマのフンが見つかる場所は「ツキノワグマが採食のために何回も行き来する自身の行動圏(他のクマ個体を意識したマーキング行為・エサ場の独占志向=大きな個体のナワバリ)」としている可能性があるため、夜明け前の時間帯はより一層ツキノワグマへの警戒が必要です