今朝(2020.10.02)も里山エリア(エコミュージアム園内ではありません)の早朝定点観察を実施しました。巡視コースにはツキノワグマの新しいフンは無かったのですが、調査の途中で環境行政の大先輩Aさんから貴重な情報をいただきました。その内容は「2週間前から栽培中のクリをツキノワグマに食害されている」「野生動物用の忌避剤もクマに蹴散らかされた」「栗の木の太い枝をクマにバキバキ折られた」「このエリアのツキノワグマの生息密度はどんどん高まっていると判断される」など、生々しい現状を話して下さいました。
昨日(2020.10.01)は関川村や新発田市で、ツキノワグマによる深刻な事故が複数発生しました。新潟県では「農作業中の女性がツキノワグマに襲われる事例」が目立ちます。その理由を動物行動学の面から考察していますが、
・農業全体は高度に機械化されているが、クルミ拾い等は「年配の女性による手作業が多い」。
・そしてクマの視点から見ると「”農作業中の女性のかがんだ姿勢”が遠目からは(ライバルの)”クマの採食行為”に似ており」。その結果、「クマによるライバル排除の威嚇・攻撃行動が発動してしまう」。
の2つのストーリーが浮かんできます。ツキノワグマが他の個体と闘争する際の映像を見ると、「前足を横からの張り手のように使う様子」が分かります。この動作をツキノワグマが人間の頭部や顔面に用いた場合、深刻な受傷事故となってしまいます。
ツキノワグマが人里に多数出没する現状の中、農作業を安全に行うためには、
・田圃に着いても自動車からすぐには降りずに「熊除けのクラクションを5回以上鳴らす」。
・クマからライバルの採食個体と誤認されないよう、黄色や蛍光色等の明るい色の服装で作業する。
(クマに似た黒色や茶色の服装では作業しない)
・広い範囲に人間の存在を知らしめるため、爆竹や蚊取線香、熊鈴やラジオ等でクマの嗅覚と聴覚に訴求する。
・バイクで畑まで移動した際は「バイク用ヘルメット」を着用したまま作業する。
・何よりも早朝や夕方に「一人で作業しない」。
等の対策が求められます。
<このような美しい朝の風景も、実はツキノワグマとニアミスしやすい”魔の時間帯”でもあります>
<この里山エリアでは栗の木の太い枝もクマにバキバキに折られ、樹上には熊棚が出来ています>