気がつけば当ブログでの「里山のツキノワグマシリーズ」も9回を数えています。執筆に係る直接の契機は令和元年10月の「新潟県魚沼市におけるツキノワグマによる人身事故」の原因究明とその背景の研究ですが、フィールドでの定点観察を通じて得た私たちの知見や情報は、別の観点から見れば「ツキノワグマからの訴え」と言えるのかも知れません。ツキノワグマによる人身事故は、人間の側にもツキノワグマの側にも良い結果をもたらしません。ツキノワグマによる事故を防止するためにも、フィールドの自然情報を随時提供してゆきたいと思います。
さて、今回のテーマは「アケビ採り」です。新潟県魚沼地方では「アケビの実そのもの」よりも「新緑の頃のアケビの新芽”木の芽(キノメ)”」としての利用が一般的かもしれません。キノメ摘みの時期はちょうど5月の大型連休の頃が最盛期ですが、この時期はまだ「藪が薄い」こともあって、ツキノワグマとの不意の出会いは比較的少ないようです。ところが、アケビの実が熟して食べ頃となる秋には「林縁部の藪がかなり濃くなり」、ツキノワグマとの遭遇も意図しないタイミングで突然やってくるかも知れません。
新潟県魚沼地方ではアケビの実は日当たりの良い林道脇などに沢山実ります。アケビの実はツキノワグマの他にも「テン」や様々な野鳥などが採食しますが、成長を続ける旧薪炭林の里山周辺には「採りきれないくらいのアケビの資源量」が存在します。アケビは渓流沿いに伸びる林道脇などでも良く見かけますが、渓流沿いは水の音が邪魔をして「ツキノワグマとの不意の接触」を招きかねません。守門山系の東側にある藤平山(ふじびろやま)周辺の旧薪炭林は日当たりも良く、沢山のアケビが実りますが、ここもツキノワグマの生息密度が一段と高いエリアです(毎年畑や人家の周辺での目撃情報が数多く寄せられます)。フンの内容物調査からも、秋のツキノワグマは一生懸命アケビの実を探して採食していますので、秋本番の時期のアケビ採りは要注意です。