新潟県の環境学習拠点施設である「浅草山麓エコ・ミュージアム」には、国有林内に開設された「遊々の森」を含めて、総延長5kmほどの自然観察歩道があります。これからの季節、この「長大な自然観察歩道の草刈りと藪払い」が安全管理業務のなかで大きな割合を占めることとなります。その際に最も重要な事は「作業時の安全確保」。野外にはマムシやツキノワグマなどの危険生物がいますが、施設スタッフが作業時に一番警戒しているのが「スズメバチ」です。「スズメバチ」も何種類か存在しますが、周囲には日本で最大級の「オオスズメバチ」も生息していますので、作業時には「スズメバチ用の防虫スプレー」を必ず携帯することとなります(幸い、今まで緊急使用した事はありませんが・・)。
さて、先日の園内巡視の際ですが、「樹上にあるはずの丸みを帯びた(たぶん)キイロスズメバチの巣の一部」が「まだ新しく(冬の積雪につぶされていない)乾燥したフレッシュな状態で」地面に落ちていました。どんな生き物が樹上のスズメバチの巣を破壊して、ここまで運んできたのでしょうか?その答えと意味を理解した瞬間、嬉しさが込み上げてきます。
そう、最強の蜂ハンターである彼らが今年も浅草岳エリアに登場してくれたようです。その名は猛禽類の「ハチクマ」。
地中に営巣するクロスズメバチやオオスズメバチ、また樹上に営巣するキイロスズメバチなど、「蜂の幼虫を専門に捕食する猛禽類であるハチクマ」は、「利用者の皆さんや屋外で作業する私達」を「蜂による事故から守ってくれる(言い過ぎ?)心強いパートナー」です。ハチクマには浅草岳エリアでどんどん蜂を見つけてもらい、思う存分蜂を食べてほしいと願っています。
梅雨の晴れ間に空を見上げると、切ないくらい真っ白な入道雲と眩しい青空を背景としてハチクマが悠然と滑空してゆきます。こうして毎年ハチクマが観察できる事。ハチクマが園内外でスズメバチを捕食してくれることに感謝の気持ちでいっぱいです。ハチクマのお陰でしょうか、園内の野外作業でスズメバチに刺された事は今まで一回もありません。ありがとうハチクマ!この夏もよろしくね。
<追記>
「各種のスズメバチが生息している環境」は即ち「生態系全体の豊かさを表している」こと、そしてスズメバチとハチクマの関係もまた日本列島周辺(東アジア〜東南アジア)の自然環境の多様性と生物進化の妙を示しています。