フィールドワークの醍醐味を教えてくれたのは学生時代の恩師ですが、動物行動学の切り口が必要とされる場面は多数あります。そのひとつが「ロードキル(野生動物の路上斃死)」の考察です。食事中の方は本当に申し訳ありません。今や日本全国がクルマ社会ですが、ある時間帯における自動車の通行量や道路の設置場所などにより、不幸な事ですが「ロードキル」が発生しやすい条件が生じます。具体的には「交通量がそれほど多くなく」、「道路のすぐそばに山や川、雑木林などがあり」、「特に水田の境界」がある場所が当地(新潟県魚沼地方)における「野生動物のロードキルの多発地点」となっているように感じます。
このような場所では、
「雨の日の夜にカエルが水田から道路を横切って移動し」
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「このカエルを狙ってキツネやタヌキが道路に近寄り」
↓
「運悪く通りがかった自動車との接触によりキツネやタヌキのロードキル発生」
となるようです。こうしてロードキルの犠牲となった野生動物ですが、明け方にはカラスなどに食害され、その後は「朝の通勤ラッシュ前後に道路管理者などにより衛生的に処理されます」。
さてロードキルはこうして終わることがほとんどのように思いますが、これに関連してある疑問が浮かびます。それは「毎年早朝の時間帯にツキノワグマが道路付近で何回も目撃される固有の場所※が複数あること」です。最初は「川沿いのオニグルミの若い実を採食するためにクマが来ているのかな」とも思いましたが、「オニグルミの木に登っているクマを見たという情報はほとんど報告されていない」ようです。そこで浮上するのが、
「ツキノワグマはロードキルの犠牲となったキツネやタヌキを道路付近で探して食害しているのではないか?」
という仮説です。実際にツキノワグマと自動車との接触事故も時々報告されていますが、もしかしたらその背景には「食肉目に分類されるツキノワグマが道路に近づく真の理由」があるのかも知れません。
この仮説を裏付ける具体的なデータは今のところ手元にはありませんが、交通事故の無い社会を目指すのは当然として、「野生動物のロードキルを無くす事」と「ツキノワグマによる人身事故を防止する観点」からも、考察を続けてゆきたいと思います。
※当地では河川、雑木林、水田、橋、トンネル、広葉樹を主体とする山塊に隣接、人家から距離あり、朝晩の通勤ラッシュはあるが夜間の交通量は少ないという条件を幾つか備えた場所です。