愛猫が教えてくれた事 動物行動学と自然観察

 新潟県魚沼地域は水田が広がる農村地帯を数多く有しています。今では少なくなったかも知れませんが、かつては家の敷地内でニワトリを飼い、ウサギを飼い、ブタを飼い、カイコ(カイコ蛾の幼虫)を飼い、そして家の中ではネズミ避けとして「イエネコ」を飼っている農家が多くあったと思います。動物行動学の開拓者とも言えるコンラート・ローレンツは著作「ソロモンの指輪」でも知られていますが、ローレンツも子ども時代に「家畜」や「ペット」に囲まれた生活を送っており、この時の体験が後の「ローレンツの動物行動学」を形作ったと思われます。

 「身近にいる動物は、ペットや治療中の野生傷病鳥獣であっても、動物行動学の格好の教材であり、先生なんだよ」とは学生時代の恩師の言葉ですが、確かに小さい頃に家で飼っていた「イエネコ(愛猫)」からは多くの事を学んだ様に思います。獲物を狩るハンターとしてのネコ、優れた運動能力を有する動物としてのネコ、母親として母性たっぷりのネコ、家族の一員としての愛らしいネコ。特に夜寝ようとするときに、愛猫が布団の中に入ってきて「行儀良く屈んで”添い寝状態”で眠りにつく様子」は今でも印象深く記憶に残っています。

 「ネコの添い寝」は「母親(親ネコ)として人間(仔ネコ)を世話してあげているつもり」なのか、「動物の親子の愛情チャンネルを擬似的に用いて」「人間に何らかの意思を伝えていた」のか、今でもその意味は分かりませんが、愛猫と過ごした日々は楽しい思い出の連続です。そして愛猫が教えてくれたことは、自然観察のエッセンスとして今でも息づいています。

 さて、自然や野生生物について学ぶとき折にふれて思い出す恩師の言葉があります。「人間がどんなに文明を発展させ、進化しても、その存在の中心は”動物としての生命”だから、自分自身を理解するためにも我々は動物行動学を学ぶんだよ」。自然観察も、大きな意味では「人間と生命を見つめ直す作業」なのかも知れません。そんな気持ちで今日もフィールドに立ちます。

 

コンラート・ローレンツの「ソロモンの指輪」についての過去の記述はこちらです。